トランス脂肪酸問題のまとめ
トランス脂肪酸が冠動脈疾患のリスクを高めるとして、WHOは総エネルギー摂取量の1%未満に抑えることを勧告しています。それを受ける形で、米国FDAは、トランス脂肪酸を食品に用いることを禁止することを決定しました。
日本でも、食品安全委員会、農水省がトランス脂肪酸問題のまとめを発表しています。
○農水省 トランス脂肪酸 http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/index.html ○食品に含まれるトランス脂肪酸の食品健康影響評価の状況について(食品安全委員会) http://www.fsc.go.jp/osirase/trans_fat.html ○科学無視のトランス脂肪酸批判 思わぬ弊害が表面化 http://wedge.ismedia.jp/articles/-/1932?page=1
トランス脂肪酸は、週刊誌などに「狂った油」「食べるプラスチック」などと酷評され、今でもネット上では毒物扱いする記事も多くみられます。しかし、日本でのトランス脂肪酸問題は、少し複雑です。
クッキーなどを焼くときに、植物油だけだとべたべたしたものになり、バターなどの固形の油を使うとカラッと仕上がります。しかし、バターは高価で、生産量も限られるため、何とか安価な植物油を使って、バターのような油が作られないかと考えて作られたのが水素添加油脂です。 植物性油脂に高温高圧で水素を反応させると、油脂に含まれる不飽和脂肪酸に水素が入ります。
リノール酸 + 水素 → オレイン酸 オレイン酸 + 水素 → ステアリン酸
といった具合ですが、このとき天然にはほとんど存在しない、トランス脂肪酸ができてしまいます。 トランス脂肪酸は、マーガリンやショートニングなどの水素化油脂に含まれ、それらを使った焼き菓子、ケーキ、クリーム、揚げ物などに多く含まれています。
平均的な日本人のトランス脂肪酸摂取量は、アメリカ人に比べてずっと少なく、総エネルギーの1%未満で、WHOの勧告値を下回っています。 ただし、10代~20代の女性で、お菓子やケーキ、ファーストフードなどに偏った食事をしている人は、トランス脂肪酸の摂取量が多く、心疾患リスクが高まります。
企業もトランス脂肪酸の含有量が少ないマーガリンやショートニングを開発しており、この数年間で、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸は減少しています。 製品に含まれる、トランス脂肪酸を調べた情報も公開されているので参考になります。
http://news.livedoor.com/article/detail/10335297/
製品中のトランス脂肪酸は減少しており、今後日本では大きな問題にはならないと考えられていますが、トランス脂肪酸が減少した分、今度は飽和脂肪酸の摂取量が増えると考えられます。 飽和脂肪酸も心疾患の原因であり、過剰摂取は控えるべきものです。しかし、食の洋風化で、日本人の飽和脂肪酸摂取量は増加しており、すでに20代~30代の女性は、目標量を上回っています。このような食事のバランスの崩れが、将来の健康リスクを高めることが懸念されています。
トランス脂肪酸ばかりに目を向けるのではなく、食事の栄養バランスを考えて、きちんとした食生活を送ることが最も重要です。